【コラム】ファシアの機能改善に必要な刺激とその頻度について
執筆者:浅賀 亮哉
人体の至る所に形や性質を変えて存在するファシア。
その主な機能は、
①あらゆる組織や器官の位置を保持する
②組織間の滑走性を保つ
③多分節・他方向への力の伝達や情報の伝達を行う
④筋出力や筋緊張の調節に関与する
⑤知覚センサーとして働く
⑥位置・運動覚センサーとして働く
などが挙げられます。
これらの機能はファシアの異常な形態により機能低下が生じることが示唆されています。異常なファシアの状態を改善するためには、ファシアに対しどの程度の頻度で、どの様な刺激を加えれば良いのでしょうか?
まず、ファシアを構成する細胞成分のひとつである線維芽細胞は、繰り返し機械刺激を加えると、ファシアの形態を加えられた刺激に適応させると言われています1)。そのため、ファシアに対し、圧迫や摩擦、牽引や剪断などの刺激を加えることが、ファシアの機能改善に効果的かもしれません。
また、ファシアを構成する細胞外マトリックスの基質成分であるヒアルロン酸は、その温度が35〜40℃に達するとゲル様の状態からゾル様の状態へと移行すると言われています2)。つまり、上記よりファシアは動かすこと、温めることでその機能が維持向上される可能性があることがわかります。
では、その頻度はどの程度なのでしょうか?
ファシアを構成するヒアルロン酸のターンオーバーは2〜4日、グリコサミノグリカンのターンオーバーは7〜10日と言われ、その間、細胞が合成的に働かなくては、ファシアを構成する基質量が減少してしまうと言われています3)。
基質はファシアを構成する水分要素を担う部分であるため、基質量の減少は、ファシアの滑走性低下や、異常な張力の発生、それらに伴う疼痛症状などを生じさせるかもしれません。
また、上記の「細胞が合成的に働く」ということに関しては、機械刺激を加えることでも促されるとされています。つまり、早くて2日に1回、遅くても10日に1回は運動やボディーケアなどを行うことで、ファシア機能の維持向上を期待できるかもしれません。
運動に関しては、特別なトレーニングではなく、散歩やラジオ体操など額に少しだけ汗がにじむ程度の運動でも良いとされています。
<文献>
1)Robert Schleip, Divo Gitta Müller : Training principles for fascial connective tissues: scientific foundation and suggested practical applications. J Bodyw Mov Ther. 2013 Jan;17(1):103-15.2)Matteini P, Dei L, Carretti E, Volpi N, Goti A, Pini R. Structural behavior of highly concentrated hyaluronan. Biomacromolecules. 2009 Jun 8;10(6):1516-22.
3)Robert Schleip, et al: Fascia : the tensional network of the human body : the science and clinical applications in manual and movement therapy, Churchill Livingstone/Elsevier, 2012.