私たちは、体組織への機械的刺激に対する人体の適応性を応用し、ファシアがもつネットワーク機能の再建を図る手段や過程のことを「ファシアトレーニング」と考案したいと考えております。

医学用語としてのファシアは「ネットワーク機能(各組織や器官を繋ぎ、支え、知覚するシステム)を有する線維性の立体網目組織」と定義されています1)。私たちはこの定義に基づき、体組織への機械的刺激に対する人体の適応性を応用し、ファシアがもつネットワーク機能の再建を図る手段や過程のことを「ファシアトレーニング」と名付けました。そして、ファシアトレーニングにおける重要な要素に簡便性と再現性を位置づけました。

なぜ、名称に「トレーニング」という用語を用いたのか。その理由は二つあります。

世界大百科事典第2版ではトレーニングは「環境や運動刺激に対する人体の適応性を利用し、身体運動を行うことによって意志力を高めた人間の体力を高めること」と記述されています2)。体力の身体的要素にファシアが含まれることはファシアの定義より自明であり、トレーニングとファシアは密接に関係しているといえます。これが一つ目の理由です。

一つ目の理由が用語の意味に由来するのに対し、二つ目の理由はトレーニング指導におけるある課題に由来します。トレーニングには効果を高めるための原則が九つあることが知られています3)。中でも注目するべきは「反復性の原則」です。この原則はトレーニングにより獲得した効果は継続しなければ次第に失われるというものです。しかし、指導経験がある方であれば誰もが、指導したトレーニングをクライアントが継続して行うことが難しいということに共感頂けると思います。

この指導したトレーニングをクライアントが継続できないという課題の本質は、効果を高めることを意識するあまり、指導内容が複雑かつ難解なものとなりやすいという指導の在り方にあると私たちは考えました。

医学知識に乏しいクライアントがトレーニングを継続して行う為には、トレーニング内容は簡便であるべきです。加えて、何度実施しても同様の効果が再現できるものであるべきです。この考えの下、ファシアに対する独自のトレーニング理論を確立させ前述の課題を解決したいという思いから「トレーニング」の用語を用いました。これが二つ目の理由です。

 現在、当会ではEMS機器を使用したファシアに対する新たなトレーニング「EFSトレーニング」を考案し、提唱しております。今後は会員の皆様とともに徒手療法や運動療法、針治療等様々な治療手段をもとに多種多様なファシアトレーニングを考案したいと考えております。当会で生み出されていくファシアトレーニングに是非ご注目ください。

引用・参考文献

1)一般社団法人 日本整形内科学研究会ホームページ(2024年6月閲覧)https://www.jnos.or.jp/for_medical
2)世界大百科事典 第2版 平凡社 1998
3)厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトHPより引用(2024年7月閲覧) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-001.html